耐震設計偽装事件

 私は,地震に関することを生業としています.地震に関する学問としては,地震学と地震工学があり,私は前者の方です.でも,ある程度は後者のことも,囓っております.
 地震の時に,被害を少なくする方法の一つとして,建物を丈夫にすることです.これは,兵庫県南部地震阪神・淡路大震災)の時の被害の調査(例えばこんな記事)からわかるように,耐震基準の改訂を境に建物の倒壊率が低くなることが実証されています.したがって,今回のようなことは,起こっていたとしても,わずかだと考えていました.それだけに,ほんとに驚きです.
 この事件で改めておもうのは,基準の策定も重要だけど,それを監視するにも重要であるということです.といって,監視のコストが大きすぎると,無駄になってしまう.その落としどころが難しい.抽象的に議論することはたやすいが,それを実際の予算とか定員とかに置き直すと,いったいどのくらいが適正かという基準を導くのは難しい.

 ところで,先日のパキスタン地震でもそうでしたが,多くの国では脆弱な家屋が倒壊して多くの方が亡くなります.そうした国では,地震予知への期待が高いです.何度かいった,カザフスタンでもそうでした.今はどうだかしりませんが,見学させてもらった観測所で,いろんな生き物飼っていました.人が住むのは,地震の揺れに脆弱なアパートです.アルマティのすぐ南にあるザイリスキー山脈の麓を走る断層が活動したらひとたまりもありませんし,実際壊滅的な被害を受けたこともあります.こうした国では,地震が起こると皆,建物が崩れる前に外に飛び出すのだそうです.このこともあって,この国は首都をアルマティから,地震の心配のないアスタナに移しました.でも,この断層のおかげで存在するザイリスキー山脈からの水は,生活に必須です.移転は遅々として進んでいません.各国の大使館も,アルマティにある.
 自然と上手に共存するのは,なかなか難しい….