泥湯温泉の火山ガスの事故

 噴気口は,暖かいですからそこだけ雪が融けています.そこにガスが溜まっていたのでしょう.
 私も,現地観測で,噴気口に硫黄が沢山ついているようなところにずいぶん行きました.硫黄は,硫化水素が空気と混じると

  2H2S+3O2→2H2O+2SO2
  SO2+2H2S→3S+2H2O

というような反応で生成されます.硫黄がまだ工業原料として価値があったころ*1,採掘している人は経験的に知っていて,例えば十勝岳の火口付近にあった硫黄鉱山では,噴気口のガスを煙道に導き,効率的に空気に触れさせて硫黄を採取していたそうです.噴気口の周辺に堆積した硫黄を掘り出し,釜で煮て取り出すより効率的だったようです.
 そんなところに行くのですから,よく一緒に行った年上の人に,怒られました.ちょろちょろ噴気口に近づいたり,蛸壺になっている泥火山に不注意に近づいたりするものですから.また,硫化水素臭の強い噴煙に巻き込まれ*2,このまま風向きが変わらないとやばいなと思ったこともありました.
 ちなみに,十勝岳の煙道は,昭和38年の噴火でことごとく破壊され,89年の噴火の前年の初冬に登ったときは,跡形もなかったです.このときは,噴火の数年前から噴気が活発になって硫黄の生産量が増え,また体に感じる地震も増えたので,噴火の時うちの職員も火口近くの小屋に滞在していました.噴火で何人か亡くなったのですが,幸いうちの職員は命からがら逃げることができました.その人と,一緒に仕事をしたことがあり,その時の話を聞かせてもらったことがありました.内容は,ほとんど忘れてしまいました.酒を飲んでいたからな.
 88年に行ったときは,今はもう無人になった十勝岳の観測所に勤務していた人と行き,知り合いの方の「北の国から」に出てくる小屋そっくりなところに泊めてもらいました.

*1:現在は,原油から回収されるので,採掘する価値が無くなった

*2:臭いがするうちは,大丈夫らしい.濃度が高くなると,逆に臭わなくなるそうだ.そこまで,危ない橋は渡ったことはないが