「M8」読み終わりました

 後半は,まぁまぁでした.でも,前半がね.いろいろ突っ込みどころがありますが,

  伊豆半島地震が群発 → 普通,伊豆東部火山群の火山活動との関連を考える
  群発が規則的に起こる → めったにない.歪み速度が大きい場合に見られる場合があるが,長期間続かないのが普通.歪みの変化の大きい火山の噴火に関連した場合にはあって,私の知る限りでは,雲仙と三宅島であった.
  シミュレーションによる地震予測 → 繰り返し地震を起こすのが精一杯.

てなところでしょうか.シミュレーションの困難さはいろいろあって,例えば気象と比べると

   気象              地震 
 大気の中の圧力分布がわかる  地表の変位の分布しかわからない
 大気の物性はどこも同じ    様々なスケールで物性の違う岩石が混じり合っている
                 おまけに,高圧下の物性がわからない
 水の挙動がある程度わかる   現在の水の分布を推定するのが困難

 
などなどです.地震の場合,初期値の推定がすごく困難です.小説の中で,地震が起きたのでそれで初期値を書き換えるとありましたが,そもそも地震でどの程度初期値が変わったかわからないのです.地下を調べる手段は,地震波と電磁波がありますが,いずれも波長が長く,微細なことがわかりません.おまけに,地震のシミュレーションに必須な絶対応力(気象での気圧)を観測する手段がないのです.GPSがどうした,歪み計はどうしたという声が聞こえてきそうですが,これらは地面の動きを測定する装置で,応力は測定していません.これらのデータから応力を計算できますが,物性値を知る必要がありますが,この物性値の測定が難しいのです.

 いずれにせよ,1995円は高かった.


 クラークによる「マグニチュード10」というのもあるそうで,是非読んでみたいと思います.なお,真保裕一の「震源」は,読んだことがあります.